風寒人影少

風寒人影少、唯見電灯連、終夜船来去、汽声破客眠。(風は寒く、人影もまれに、ただ電灯の連なっているのを見るだけである。一晩中船舶が入港しては出航してゆき、汽笛の音が旅客の眠りをさまたげるのである。)[#ここで字下げ終わり] アデンよりポートサイドまで海路一千四百マイル余、ポートサイドよりマルセイユまで一千五百マイル余なりという。十八日(日曜)、午後二時マルセイユ港抜錨。十九日、夜来急雨あり。気候にわかに暖を加う。二十日早天、スペインの連山を見る。その高きものは、みな冠するに白雪をもってす。[#ここから2字下げ]今日も亦ヒマラヤを見る心地せり[#ここで字下げ終わり] 一望わが国の山岳に接するがごとし。午後二時ジブラルタルの海峡に達し、三時入港す。港内にありて砲台を望むに、金城鉄壁もただならざるなり。[#ここから2字下げ]山勢屹然千仞余、砲門高構圧坤輿、金城鉄壁独難比、恐是当初帝釈居。(山の形はけわしくそびえたつこときわめて高く、砲台は高みに築かれて大地を威圧している。金城鉄壁のようすは何ともくらべようもない。おそらくはインド神話の帝釈天が仏教を守護したという善見城なるべし。)[#ここで字下げ終わり] 午後五時解纜。海峡最も狭き所、直径二里前後なるを覚ゆ。アフリカ・モロッコと相対し、風景すこぶる佳なり。 二十一日、快晴。ポルトガルの海岸にそいて北走す。ポルトガルの山はスペインのごとく高からず、その多くは高原にして一つの雪嶺を見ず。首府リスボンに入る所、灯台高くそびえ、山海の風光またよし。余、即時所感をつづる。[#ここから2字下げ]

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